2・驚きと、喜びと、悲しみと

2/29
3750人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
翌日の夕方、出勤すると好奇心一杯の 二組の目が私を出迎え、 「満夜ちゃんは昨日と同じ階を担当してね」 と、笑顔の中本さんにそう言い渡された。 「でも、康子さんは何て?相互チェックのためにも 連続で同じ階はしない決まりでしょ?」 二人の企みがあまりに見え見えで呆れてしまう。 本当はどの階でも構わないのだけれど、一応の 抵抗をしてみせた。 「康子ちゃんも了承済みよ。ねえ」 「そうそう、むしろ彼女が満夜ちゃんに そう言うようにって」 二人が顔を見合わせ、代わる代わる言う。 「康子さんまで?で、その康子さんはどこに?」 首謀者の名前を聞き、唖然とした。 昨日はこの二人の暴走を止める側だった彼女が、 今日は率先しているなんて。 「さあ?用があるからって、先に出て行ったけど」 きっとそんなのは口実だ。 私と顔を合わせたら、文句を言われるから 逃げたに決まっている。 「まったく、みんな他人事だと思って 面白がって」 みんなの勝手な期待に憤慨し、口を尖らした。 あの人が今夜残業しているかどうかは わからない。 昨夜と同じ階にいたとしても、都合よく 会えるとは限らないのだ。 彼が自ら会いに来てくれれば別だけれど。 あり得ない考えに首を振り、乱暴に ワゴンを押して担当階へと向かった。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!