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赤いライトを回しながらやって来た一台の車。
その訪れが、悪夢の始まりだった。
無遠慮に鳴らされたチャイムの音と共に、
現れた男達。
驚きながらも毅然とした態度で、彼等に従い
部屋を出て行く父。
泣きながらそれを追いかける母。
テーブルの上で揺らめく蝋燭の炎が、
目の前で起きている出来事を幻想のように
思わせる。
私の18歳の誕生日は、祝いの言葉を
貰わぬうちに幕を閉じた。
テーブルの上で冷たくなっていく、
母の心づくしの料理の数々。
シャンパン代わりに開けた炭酸水の
泡のように、幸せな一時は儚く消えていく。
私は言葉も無く、ただ呆然とそれを見ていた。
蝋燭の炎が燃え尽きたことにも気付かず、
闇に包まれた部屋の中に一人立ち尽くした。
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