番外SS 有能なる銀行マンの有能たる所以《ゆえん》

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なんとなく疑問の残るままだけれど、その 笑顔に後押しされて、言われた通りに署名と 捺印をする。 書き終えるのを隣で見ていた大翔は、それを 取り上げてミスや漏れを確かめるかのように、 じっくりと用紙全体を見回すと、「良し」と 小さく頷き、クリアファイルに丁寧にはさんで 鞄に入れた。 「さてと、今から役所に行って出してくるな」 「え、今から!?別に明日でも良いでしょ?」 「今日は大安なんだ。それに、善は急げって 言うだろ?明日また来るからな。愛してるよ、 奥さん」 そのまま椅子から立ち上がった大翔は、チュッと 音を立てて唇を合わせると、引き止める間も無く 颯爽と部屋を出て行った。 「大翔って、あんな人だったっけ……」 手抜かり無く全ての準備を整え、反論の 余地も無く簡単に丸め込まれてしまった。 今のが彼の仕事のスタイルなのだとしたら、 成績が良いのも頷ける気がする。 「奥さん……か」 その言葉の余韻に浸りながら、まだ彼の感触の 残る唇にそっと指先を滑らせた。 END
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