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佐藤が席に着席するのを見届け、俺に視線を向けた原チャンはまた大きく深いため息を吐き出した。どうして、そこで俺をみたんでっしゃろか。喧嘩売ってます?
喧嘩ならもちろん買うがと思いながら、後が怖いので睨まずに笑顔で応える。
原チャンは腕時計で時間を確認し、
「それじゃあ、今日はもう時間がないからいない奴は手を挙げろ」
なんて安いボケをかますもんだ。仕方ない、俺が助け舟でも出してやろう。この俺が! やれやれと肩を竦めながら手を上げ立ち上がる。
「原チャーン。いない奴はいないんだから手を上げれませんよー」
貸しイチだからな、原チャン。
「うっし。和田以外は全員出席な。今日も一日、しっかり勉学に励むように」
「そんな無慈悲なっ!?」
「あ、篠塚先生。後はよろしくお願いします」
「わかりました。お任せください」
調度良いタイミングでなったチャイム音と共に爽やかな笑顔を浮かべ退室する原チャンと入れ替わるように入ってきたのは、1限目の担当教師だ。篠塚(しのづか)ーーー通称ゴリ塚。本人の前で呼ぶと拳骨だけじゃ済まない制裁を下されるのだ。担当教科は数学で、俺の苦手科目の一つ。
「げっ。ゴリっ……篠塚、センセー……」
「うん? 今ゴリ塚と呼んだか、おい?」
「いいいい言ってないっすよ。や、ややややだなぁ。あはっ、あはははは」
「先生。ヒナくんはちゃんとゴリラって言ってました!」
「藤咲てめええええええええ!!!」
「覚悟しろや、和田ぁ」
ばきぼきと拳を鳴らすゴリ塚に俺は戦慄し、咄嗟に机の下に身を隠すが、授業が始まるということで引きずり出された。
振り降ろされた拳は見事俺の脳天へと直撃。
「ぎゃああああああああああああっ!!」
俺の絶叫が教室内に響き渡った。
……この日、俺は死んだ。真っ白の廃人となって死んだ。
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