【一章】ここは薔薇の花園です

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◇ ◇ ◇ ◇ ここ、葉蘭園男子高等学園は名前から分かる通り、女人禁制の男だらけの学園である。 幼稚舎から始まり初等部、中等部、高等部、大学部まである、いわゆるマンモス校。エスカレーター式に上がれるかと思えば、そんな事はなく。高等部からは一般と同じように入試試験を受けなければならない。それに合格したものだけが、高等部へと進学できるシステムだ。 ここで一つ、他とは違うルールが設けられる。 この学園に通う生徒は大多数がお金持ちの家に生まれ、親の「うちの子が共学に行って変な女の子に捕まってしまうのは困る」というワガママで入れられたお坊ちゃんたち。入試で落ちたとしてもそれを許す親ではないのだ。 原チャンに聞いた話だと、随分昔にそう言って講義してきたモンスターペアレントが、権力をチラつかせて潰しに掛かったとかなんとか。恐い世の中だ。 そんな事があったせいか、高等部に上がる生徒はたとえ筆記試験に落ちたとしても、何か他の得意科目だけの試験や、実技試験、特技を面接試験で披露すれば一発で合格を貰えるような制度を作ったのだ。外部からの受験生は面接試験は無いらしいが。 俺も実技で合格した一人ではあるので、この制度がどれだけ有り難いかを実感している。 過酷な受験を乗り切り、高等部へ進学出来たものに待っているご褒美が寮制度。ガミガミ言う親から都合よく離れることができ、各部屋には風呂・トイレ・キッチンが完備されているとくれば、喜ばないものは居ないだろう。 ただ、厳しい。過保護かっ、とツッコミを思わずしてしまうくらいに厳しい。 部屋は必ず二人部屋だとか、部屋を出るときは鍵を寮長に預けないといけないだとか、外出する際は生徒会と担任教師の許可を貰わないといけないだとか、門限が早いだとか。 酷い時は遊びに出かけるだけで「誰と、何処に、何をしに行くか。帰宅時間の予定は」なんて聞かれることなんてザラだ。
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