【一章】ここは薔薇の花園です

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つまりは、軽い幽閉である。教師たちも大事なご子息に何かあれば大変だと目を光らせているせいで、迂闊に遊びにも出かけられない。 フラストレーションが溜まり、性欲に従順の思春期たちは女性との出会いを諦め、身近にいる男子に手を出してしまう状況に陥ることになった。右手と言う名の恋人だけじゃ飽きるもんな。 そうして3年間を、いや、幼稚舎含めると約15年を過ごし、惜しまれながらも華々しく卒業して行った生徒たちが、飲み会の場などで言うのだ。 「オレは男子校出身でした。ホモですか? もちろんいましたよ。なんせ幼稚園からある全寮制っすよ? ホモ大量発生です(笑)」 この一言から付いた略称が『バラ園』。恨むぞ先代。 それからというもの、高等部を受験する外部生が増えた。普通の高校よりも合格できる人数は少ない。そりゃそうだ。庶民嫌いの金持ち校だしな。極力外部との接触は避けたいのだろう。表向きの理由は在校生の人数の関係上うんぬんかんぬんらしい。 受験戦争から命からがらに合格通知を貰った数人の一人がどうやら佐藤だったのだそうだ。 地獄の一限目を超え、残りの授業を寝て過ごし、訪れた昼休みには元気いっぱいの俺が佐藤に突撃し、遅刻の訳を聞き出すと、まず前提として僕は外部生なんだ、と告げられ、俺でも知っているこの学園の歴史もどきをイチから説明された。 いや、知ってるけど。俺はつい真顔で答えると、藤咲に叩かれた。 「うん。つまりね、僕はこの学園の噂に期待して入学したんだよ」 「はあ? ホモだらけってことに? 意味わからん」 「まあ普通はそう思うよね。でもそう言う人種がいるってこと、覚えておいて」 「んー。それと今日の遅刻はどう関係するの」 机を囲んでもぐもぐと持参していた菓子パンを頬張り顔を顰める俺とは対照的に、藤咲は自作の弁当をつつきながら面白そうに尋ねている。佐藤は苦笑しながら、同じく売店で買ったのだろう惣菜パンを手でちぎっている。そこらのお坊ちゃんよりも上品に食うな、佐藤。 「皆知ってると思うけど、今日は転校生の入寮日だったでしょ? だから、ちょっと、気になって。因みに、鼻血はその時興奮して出ちゃったんだ」 「あれ、佐藤も見に行ってたの? 俺も俺も~」 いぇーい、仲良しー。 ハイタッチを交わす俺と佐藤。ぶすくれる藤咲。
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