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「アイツの説教ってネチネチしてて嫌なんだけどな~。まあ、夕飯のために機嫌伺いしつつなんとか短くしてもらわなきゃだ。んじゃ、原チャン。俺帰るね」
俺は虚空を見上げ結論を出すと、原チャンと片倉に手を振りお暇しようとした、が、止まる。原チャンの笑顔が視界に入ったのだ。あれ、なんて思う。さっきの般若を背負った憤怒の表情をしていたのに。
「え、なんすか」
戸惑いと恐怖で退け腰になっている俺に、隣にいた学級委員長が無表情のまま俺を見つめて小さく口を開いた。
「今日、自分で言ってたの覚えてないの? 遅刻したら四者面談って」
「あ」
「『あ』じゃねえよ! てめぇ、遅刻免除されたとでも思ってたのか!? あんだけギャースカギャースカ言ってたくせに速攻忘れられるのか!?」
「……へへへ。いやあ、それ程でも~」
「褒めてねぇよ!! いい加減にしろ!!」
激しいツッコミの嵐を巻き起こす原チャンに、俺は逆転に成功したことにほくそ笑んでいた。
ちょっとは覚えてたんだよ? でも、他のこともやらかしてたなって考えてたら脇道に逸れていただけでして。
唇を尖らせ目を逸らす俺に片倉が小さく「子供みたいだ」と笑う。同い年の奴にガキ扱いされるのは気に食わないが、ぽんぽんと軽く叩き俺の頭を撫でる片倉の瞳は、優しげで怒りのボルテージは一気に下がる。
「……片倉、もう止めてくんない? なんか恥ずいんですけど」
2分くらいだろうか。俺は大人しく撫でられていたが、一向に止まる気配のない片倉の手に羞恥が湧いてきた。
まだ物足りないという表情を一切隠さないまま、片倉は頭から手を離した。
「原田先生、あまり睨まないでくださいよ。可愛い生徒を泣かす気ですか?」
「…………睨んでねぇよ。ただちょっと視力が悪くなったんだ」
「ほう。そうでしたか」
ニヤニヤと悪戯に笑う片倉に、そっぽを向く原チャン、そして訳がわからず二人のやり取りを間に挟まれて眺める俺の三つ巴が出来たのだが、どういう状況だろう。
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