はじまりの朝

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俺の朝はコーヒーの香りで始まる。 まだ眠い気持ちを押し込めて、ひんやりと冷たいフローリングに足を下ろした。足裏から身体全体へ染み渡る冷たさに、思わず身震い。 パジャマ代わりのTシャツとジャージの短パンを脱ぎ、着慣れた制服に腕を通す。 部屋の片隅に無造作に立て掛けられた姿見に自身を映し、前と後ろに可笑しなところがないかチェック。 うん。今日も完璧にカッコ良くて可愛い仕上がりだ。 俺は満足気に頷き最後に前髪を整える。これにて準備は完了だ。殆ど空と言ってもいいほどに何も入ってないスクールバッグを手にして部屋の扉を開け、俺を待っているだろうルームメイトの元へと向かう。 扉を開ければ、優雅に椅子に腰掛けコーヒーを飲むルームメイトがいた。目が合えば微笑みを浮かべてくるそいつに、挨拶を交わしてコーヒーを頼む。快く了承するそいつは、「そういえば」と前置きして俺に話題をふってきた。 「今日だったよね。転校生が来るのって」 「そうらしいな。授業を受けるのは明日からみたいだけど」 「……もしかして見に行ったりしないよね?」 「もしかするけど、それがどうしたのさ」 当たり前のように答えると、そいつは呆れたと目で訴えてくる。鬱陶しい。 その視線から逃れるためにコーヒーを一気に流し込み、 「ご馳走さん。いってきまーす」 「あっ。ちょっとまだパン焼けてないよ!」 「あとで売店行くからいいし」 「それに転校生の件だって……て、あ、待ってよ!」 喚くそいつの声をBGMに玄関を開けた。 さて、今日も一日頑張りますか。
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