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「? 原チャン?」
疎外感を感じて原チャンの裾を軽く引っ張る。原チャンは驚いたように瞳を大きく開き固まった。頬に赤みが差していく。
「え、え?」
吊られて頬を赤くしていく俺。
な、なんだこの青臭い青春ドラマみたいな雰囲気! うわー、うわーっ、なんかガラじゃないんですけど! 俺、こういう中学生日記みたいなことしないタイプなんですけど!
「こほんっ。お邪魔するようで悪いんですけど、俺、これから部活あるんで帰りますね。日誌は職員室に預けていくので」
見つめ合ったまま時間が止まっていた俺たちに片倉は咳払い一つで動かし、教室を出て行った。去り際にまた俺の頭を一撫でして。
片倉って結構なタラシだったのか。気づかなかったよ。
未だ引かない頬の熱を逃がすように、ペチペチと両頬を叩く。視界の隅で帰ろうとしていた佐藤が鼻血と涎を垂らして沈んでいたような気がしたが、きっと気のせいだ。うん、俺は何も見ていない!
「片倉あんにゃろう~……お前はいつまで見送ってんだ。行くぞ」
原チャンはガシガシと乱暴に自身の頭を掻きむしり不機嫌そうな顔で、ぼーっとしている俺の脳天にチョップを振り落とした。目の中に星が回る。
「いっでえぇ~っ!! ちょっと原チャン何すんの!? いたいんだけど!」
頭を押さえ猛抗議する俺は何処吹く風でいなされてしまう。ぐぬぬと唸っていると、
ふわっーーー突然の浮遊感。
どうやら原チャンが猫を持ち上げるようにして抱き上げたようだ。回らない思考でその様子を確認し俺は間の抜けた声をあげた。
「はえ? あれ、原チャン? え、どゆこと?」
「このまま国語科準備室に連れていく」
「なんで!?」
「しょうがねえだろう? 主任にバレないところはそこしか無いんだから」
その一言に俺は呆けた。確か原チャンが四者面談になったって言ってて、だから向かう場所は生徒指導室じゃないと行けない筈。なのに原チャンは自分の担当教科の準備室へ連れていくと言った。主任にバレないようにって。
「……言ってないの」
「ああ。佐藤の件もあるからな」
「ふーん。そっか」
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