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「だあ~、つっかれた~」
寮に帰るなり共同スペースのソファーにダイブした俺は大きく息を吐き出すとともに今日の疲れも吐き出した。説教が済んだルームメイトの相田浩貴(あいだひろき)は呆れ顔でそんな俺を後ろで眺めている。
「疲れたって、そんなに疲れるようなことしてたの? あの、原田先生のところで」
そう言われて俺は苦い顔をする。
あの後連れていかれた国語科準備室でみっちりたっぷりと説教3時間コースを受け、罰として小テストの採点を手伝わされたのだ。最終下校時刻のチャイムが鳴ったから開放されたけど、こんなことなら四者面談していたほうが、早く帰れたんだろう。
原チャンの好意を無下にも出来ないから言わないけど。
「……採点とか」
「それだけ?」
「あと説教!」
「……その二つだけなの?」
「…………うん」
浩貴は呆れてものも言えないようで、小さく長いため息を吐いてキッチンへと向かっていく。俺はその背中を見送りテレビの電源を着ける。夕飯の支度でもするのだろう。
「あのね、雛人。説教が嫌なんだっらもっと真面目にしないとダメだよ」
オカンみたいなこと言うのやめろ。
「うるさいなー。俺の勝手じゃんか」
ピッピッとチャンネルを変えるが、目ぼしい番組は見つからない。俺は早々にテレビを消してスマートフォンを起動させた。
「……態度を改めろって言いたいんじゃないけど、課題の一つでもやっておけばマシになるんじゃないの」
「うぅー……、イベントは明日からかぁ~」
「ちょっと聞いてるの!? ゲームより先にやることあるでしょ!?」
お玉を持って顔を出す浩貴に、俺は投げ遣りに聞いていると片手をヒラヒラと振る。
「……出来の悪い息子を持つ親ってこんな気持ちなんだ」
すんまんせんねえ、出来が悪くて。ダラリと占領したソファーに寝転びながら俺は不貞腐れた気持ちが湧き出す。
このまま不貞寝するのもありだな。そんな考えが脳裏を過ぎっていくが、キッチンから香ばしい食欲をそそる匂いが漂ってきた。
今日の夕飯は何かな。この香り的には……、チャーハン? 浩貴の作るものはなんでも美味しいから好きだ。やさぐれた気持ちが身体から抜けて、代わりに満ちていく至福の時に身を委ねる。
……あれ、俺なんか忘れてないか。
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