【一章】ここは薔薇の花園です

7/19
前へ
/26ページ
次へ
「雛人いじめダメ! 絶対!!」 「うるせえぞ和田」 「原チャンどうかご慈悲を、ご慈悲をくださいっ! 俺、今回遅刻すると風紀に呼び出されるんですよっ。しかも学年主任との三者面談……地獄のお説教タイム」 遅刻なんてなんぼのもんじゃーいと過ごしていた1年生の頃、俺はあまりの遅刻欠席率の高さに地獄をみせられたのだ。ハゲと委員長の圧力は本当にやばかった。 当時を思い出しブルブルと身震いしていると、担任様はニタリと口を三日月の形に作る。たらり、背中に冷や汗が流れた。 「いいこと教えてやろうか」 「……な、なんすか?」 「四者面談だ」 「よん、しゃ……すか」 思わず遠い目で復唱する。 つまりは俺、委員長、学年主任、そして担任と。なるほどなるほど。俺死亡のお知らせ。 はっ! いや、まだ希望はあるぞ。なんせ仲間が1人いるんだからな! 「だったら佐藤もですよね! あいつなんて無断欠席っすよ、無断欠席。呼び出し確定じゃねえですか」 佐藤こと佐藤春信(さとうはるのぶ)は、朝のホームルームが始まる30分前には着席しているような真面目な生徒だ。そんな生徒が珍しく無断欠席したということは、したということはーーー。 「あっ、そうだ。佐藤。誰か佐藤の所在を知ってるやつはいるか」 「俺と違う態度っすよね! わかってた!」 「お前は問題児。佐藤は真面目ないいこちゃん。わかったな」 「自覚してるよ! 可哀想なものを見る目をやめろっ」 荒々しく席に着き不貞寝をかます。 もう知るか。どうせ俺は問題児の最低野郎だよ。 やさぐれている俺に、隣の席の奴がポンッと一つ肩を叩く。顔を上げると、女子みたいな容姿をした男が可愛らしい笑顔で俺を慰めてくれていた。藤咲楓(ふじさきかえで)だ。 「おはよ、ヒナくん。今日は残念だったね」 「ふ、藤咲ぃ~。俺にはもうお前だけだよ~」 「ごめんね。ボクは副会長様一筋なんだ」 「ちくしょう! そうだろうと思ったよ!」 俺の周りはどうして皆して追い討ちをかけるのか…。不思議だ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加