魔王のテルマエ

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魔王のテルマエ

 “うあっつい!!”  2LDKのリビング・ダイニングに、地の底から響くような重低音が響きわたった。  “全く、貴様はいつになったら加減を覚えるというのだ。  一度ツルツルの脳ミソを取り出して、ミキサーにかけて耳から入れ直すといい…  あっ、☆■★-■④%▼;%!!” 「だ、大魔王さんっ!?」    ____  「う~ん、やっぱり洗面器は深かったかな~」  ノリ子の両手に掬われた大魔王は、プルプルッと産毛の水気を飛ばした。  “くらぁっ!  危うくローストチキンになるところだったではないか!  まったく使えん下僕だ” 「アハハ…ゴメンね?  大魔王さん。でもどっちかっていうとローストじゃなく、『ゆで鳥』だね」  “…………”  ノリ子が掌を覗き込むと、彼はプイッと顔を背けた。    “それより。  もう少しこうアレだ。  魔界の王たるに相応しい浴場はないのか。  …ん?  ノリ子よ、あれは何だ”  ピッと羽指した先には、先月の旅行で、夫のよしおと御揃いで購入した輪島塗のお椀がある。
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