捨てる女

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「他の彼氏達は? 」 「もう別れた」 「は? だって......あいつ、年上の何だっけ? 店に来たことのあるーー」 「修吾」 「そうそう。あいつ、お前にめちゃくちゃ惚れてたじゃん」 「相当怒ってた。買ってあげたもの返せって喚いてた」 「......んだよ、それ。あいつは? 年下の」 「冬馬は、今までありがとう、て天使の微笑みでバイバイだし」 「......ふざけんなよ」 「ーーだから、シオンも気にしなくていいから。この2年間なんだかんだで楽しかったしーー」 シオンはビールを一気に飲み干し、片手で缶をグシャッと潰した。 「冗談じゃねぇよ。あいつら、お前のこと何だと思ってんだ」 シオンの横顔が険しくなる。 私は心がざわめいた。 この人は、何に怒っているのだろう。 「帰る」 シオンは急に立ち上がり、上着を取って玄関へ向かった。 「ちょっと、シオン、待って」 私は慌てて追いかける。 「ねえ、私達、これでサヨナラなの? もっと何かーー」 「……ごめん」 そう一言だけ呟くと、シオンは私に背を向け去っていった。  シオンが開けたドアが無情にも私の目の前でバタン、と音を立てて閉まった。 これでお終いなの? こんな形で別れたくなんてなかった。 こんな簡単に......。 簡単......私は何を期待していたの。 シオンに。 さっき食べたものがまた口まであがってきそうになる。 最後に告げる相手をシオンにしたことだって、本当は期待していたんだろ? バカな女。 頭の片隅でもう一人の私が冷笑する。 シオンが潰した缶が床に虚しく転がっていた。 私はそれを無言で拾い、ゴミ箱に捨てた。
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