6人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「他の彼氏達は? 」
「もう別れた」
「は? だって......あいつ、年上の何だっけ? 店に来たことのあるーー」
「修吾」
「そうそう。あいつ、お前にめちゃくちゃ惚れてたじゃん」
「相当怒ってた。買ってあげたもの返せって喚いてた」
「......んだよ、それ。あいつは? 年下の」
「冬馬は、今までありがとう、て天使の微笑みでバイバイだし」
「......ふざけんなよ」
「ーーだから、シオンも気にしなくていいから。この2年間なんだかんだで楽しかったしーー」
シオンはビールを一気に飲み干し、片手で缶をグシャッと潰した。
「冗談じゃねぇよ。あいつら、お前のこと何だと思ってんだ」
シオンの横顔が険しくなる。
私は心がざわめいた。
この人は、何に怒っているのだろう。
「帰る」
シオンは急に立ち上がり、上着を取って玄関へ向かった。
「ちょっと、シオン、待って」
私は慌てて追いかける。
「ねえ、私達、これでサヨナラなの? もっと何かーー」
「……ごめん」
そう一言だけ呟くと、シオンは私に背を向け去っていった。
シオンが開けたドアが無情にも私の目の前でバタン、と音を立てて閉まった。
これでお終いなの?
こんな形で別れたくなんてなかった。
こんな簡単に......。
簡単......私は何を期待していたの。
シオンに。
さっき食べたものがまた口まであがってきそうになる。
最後に告げる相手をシオンにしたことだって、本当は期待していたんだろ?
バカな女。
頭の片隅でもう一人の私が冷笑する。
シオンが潰した缶が床に虚しく転がっていた。
私はそれを無言で拾い、ゴミ箱に捨てた。
最初のコメントを投稿しよう!