捨てる女

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彼らに別れを告げて1週間が経った。 私は本当にひとりぽっちになった気がした。 ただ、彼らとの思い出だけがワンシーンごと切り取られて、心の中に他人事のようにアルバムとして収められている。 けれど、その中で時々棘のように突き刺さる記憶は、シオンと一緒に過ごしたシーンばかりだった。 シオンが言った言葉。 シオンが見せた表情。 初めてキスした時の感触。 それらが棘のように油断した私を襲ってくるのだ。 でも、もう何もかも遅い。 このマンションも解約手続きを済ませたし、明日は会社に辞表を提出する。 会社帰りのこの夜の明かり一つ一つも記憶に残しておこう。 仕事で失敗して泣きながら帰ったこの道も、覚えておこう。 希望でいっぱいだったあの頃がついこの間に感じられた。 思い出に浸りながら歩いていたら、突然、雨粒の感触がぽつ、ぽつ、と頭皮や頬に伝わってきた。 そして次第に雨音が激しくなり、雨粒は集団でみるみるうちに私の身体を濡らし始めた。 このままでは頭から足先までずぶぬれになってしまいそうだ。 バッグの中をあさってみたら、運がいいことに折り畳み傘が入っていた。 神様ありがとうー! 普段神様なんて信じていない癖に、こういう時だけ神に感謝するげんきんな私。 私は素早く折り畳み傘を広げた。 マンションの前まで近づいてくると、ふと人影が見えた気がした。
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