捨てる女

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シオンもーーシオンも同じ気持ちなの? だとしたら、私こそ大馬鹿者だ。 「私も、遠慮してた。シオンのこと、ずっと本当は独占したかった。私だけのものにしたかった」 シオンは私の頬を両手で掴んだ。 そして私達はいつも以上に熱い、長いキスを交わした。 大人になればなるほど、本音を隠して自分を守る恋をしてしまう。 痛いほどこの身と心を晒して相手にぶつかっていく行為を、いつから避けるようになってしまったのだろう。 シオンが果たして、私を幸せにしてくれる男なのかどうかはまだ分からない。 だけど、知らず知らず膨らんでいた私の長年の想いは弾けて、もう溢れ出してしまった。 これ以上、誤魔化して生きていくなんて、できない。 ずぶ濡れの捨て猫のような2人は、仲良く手を繋いで、もうすぐ契約が切れるマンションの中へと入って行った。 明日、母に電話をかけて謝ろう。 「ごめんなさい。お見合い話はなかったことにしてください。そちらにも帰りません。本当にごめんなさい」と精一杯謝ろう。 それから取り敢えず、ずぶ濡れ猫2人の新しい引っ越し先を、明日から探し始めよう。 全身を濡らす夜の雨粒が、ライスシャワーのように私達を励ましてくれているような、そんな気がしていた。
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