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「貴方、今日から?」
あっけに取られ固まっていた日和に、宇佐美と呼ばれた客に声を掛ける。
「は、はい!赤峰 日和です!宜しくお願いします!」
「そんなにかしこまらなくて良いよ」
緊張する日和に微笑む宇佐美。
明らかに日和より年上に見るが、身に付けている物全てが兎をモチーフにしたという、年齢とファッションがアンバランスな女性だ。
「あっ!ならさ、お客として最初の質問して良い?」
「えっ…えっと……」
「分からなかったら答えたなくていいし、分かる範囲で良いよ?」
「は…はい…」
いきなりのことに戸惑う日和。そんな日和に、宇佐美は質問をする。
「ならね、彼岸花の花言葉って知ってる?」
「彼岸花の花言葉…ですか?」
「そう」
「彼岸花…」
てっきりオススメの花を紹介して欲しいとか聞かれるのかと思った日和は驚く。そして質問である彼岸花の花言葉を考える。
「確か…『再会』…だったっけ?」
「……ふーん…」
日和が答えると、宇佐美は何故か一瞬悲しげな顔をした。
「宇佐美さん…?」
「そっか、ありがとうね」
先程の表情はすぐに消え、宇佐美は微笑む。
「私はてっきり、『悲しい思い出』って答えると思ったわ」
「えっ、何でですか…?」
「だって彼岸花って、死とか不吉なイメージが強いじゃない?幽霊花とか別名だってあるし。
確かに彼岸花って色で花言葉も色んな花言葉もあるけど、そんな答えが返ってくるとは思わなかったからびっくりしちゃった」
「いや…そんなに花言葉詳しくないですよ。
ただ…彼岸花って、私が大好きだった愛犬に会った施設に咲いてたんです。だからかな、彼岸花には悪いイメージより、懐かしく感じるんです私…」
「そう…ならお花も喜ぶわ」
「えへへ…」
はにかむ日和に、宇佐美は兎の形をした棒付きキャンディを渡す。
「それあげる」
「あ、ありがとうございます…!」
「私ね、春の神様だからね、お花は皆大好きなのよ」
「はい…?」
「ふふ。エイプリルフールなら許されるのにね」
「は…はあ…」
4月と言っても、エイプリルフール(4月1日)は過ぎている。
(エイプリルフール…ってことは、嘘ってことだよね…?)
おかしな人だと思いながらも、日和は宇佐美に合わせて笑う。
「犬養さんのケチー!」
突然奥から真希の声が聞こえる。
「ちょ…!ちょっとすいません…!」
日和は宇佐美に断ると、慌てて奥へ駆けた。
「行ってらっしゃ~い」
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