彼岸花

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「その…あ、赤峰」 「はいぃぃ!!」 今まで名前を呼ばれなかった為、異常に反応する日和。 「何ですか…!?」 「そのプリンやるよ」 冴月が指差すのは、先程真希が置いて行ったプリンだ。 「でもこれ…」 「良いよ。そういうの好きだろ?晴明は色々差し入れするし、食べたいヤツが食べれば良いから」 「あ…ありがとうございます…!」 アワワと言いながら、日和はプリンを手にする。それは日和が昔から好きなケーキ屋のキャラメルプリンだった。 恐怖何処へやら、好感度上昇。 「あああありがとうございます…!」 「ん…」 日和の震えながら喜ぶ姿を見て、険しい地顔の冴月がはにかむ。 (あれ…) ふと、日和が止まる。 (犬養さん、何で私がこのプリン好きなの分かったんだろう…?) 「スプーン取ろうか?」 スプーンが無く食べれず止まったと思った冴月は、立ち上がり冷蔵庫の上にあるプラスプーンを取ろうとする。 「犬養さん…!」 「どうした、赤峰?」 意を決して聞こうとする日和だが、間近で立ち上がった冴月は予想より大きかった。 「ん?」 「あの…その…!」 不思議そうに見下ろす冴月に驚き、パクパクと口を動かし後退りする日和。 ドン。 後退りすると、書類の束が置かれた棚にぶつかる。 すると、真希が背伸びして不安定に置かれた書類の束はグラリと揺れ、そのまま下に倒れる。 「あっ…」 日和が振り向くと、書類はスローモーションのように、日和目掛けゆっくり落ちてきた。 (あっ…落ちる……) 「日和ッ!」
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