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「信じた?」
クスクス笑う宇佐美に戸惑い、日和は頭を抱える。
「…100%じゃないですよ」
「あら残念」
生まれ変わりなど未だに信じられない話だが、先程から愛犬と重なる懐かしさと、冴月の表情が全て嘘と思い切れなかった。
「でも…仮に犬養さんが冴月の生まれ変わりとして、何で年齢が合わないんですか?」
日和はポケットからパスケースを取り出し、中から古い写真を出し見せる。
舌を出す冴月の写真、日付は12年前の4月…もし冴月の生まれ変わりとしても、死んでからすぐ生まれれば年齢は12歳だろう。しかし目の前の生まれ変わりと呼ばれた男は明らかに50代…年齢が合わない。
「簡単よ。死んだときの動物の年齢を人間に当てはめただけ」
「つまり…?」
「つまり、日和ちゃんの大好きなシェパードは6歳半で亡くなったんでしょ?
シェパードの年齢×7.84で人間の年齢に例えることが出来るの。だから…6.5×7.84=50.96ってことで少数切り捨てで50歳って訳よ」
「…マジですか」
「…何か、すまん」
見た目は50歳、実際は6歳半…もはや何と言えば良いか分からない。
しいて言うなら、大好きな愛犬が生き返り再会は喜ぶ。しかしそれが自分より一回り年上だったことが少しショックだった。
そして、無意識に謝る冴月。
「あら、再会嬉しそうじゃないわね?」
「いや…何て言えば良いのか…」
「サツキも何か言ったら?」
「おい、普通信じられる方が無理だろ…?」
「何よ?せっかく私が生き返らせたのに、そんな反応?」
頬を膨らませ腕を組む宇佐美。すると、突然冴月の襟元を引き寄せる。
「えっ…」
そこには、首の左…頸動脈を切るように斜めの深い傷痕がある。
「こんな痛い思いして死んで、貴方の為に生き返ったのに…酷い飼い主ね?」
「宇佐美!」
冴月が引き剥がそうとすると、宇佐美はクスクス笑いながら軽やかに避ける。
「その傷…何で…?」
「覚えてるでしょ?サツキがどうして死んだのか」
「黙れ宇佐美!!」
「日和ちゃんは知ってるはずよ?」
冴月に構わず宇佐美が問うたび、日和は俯き頭を抱える。
「大丈夫か日和!?」
「…あのとき…知らないお花畑で、冴月といて…」
「日和…!」
駆け寄る冴月から逃げ、日和は机にぶつかる。その際、持っていたプリンが逆さまに床に落ちる。
「でも冴月は首から血が出てて…そのまま…!」
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