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ピンポーン
「日和ぁ!玄関出てー」
スマホ片手の渚が日和に叫ぶ。
「すいません、妹が…日和早くー!」
「はーい!」
仕事の電話らしく、自室に戻りながら日和を急かす。
「渚ー自分んとこの前で鍵落としてんぞー」
ドアの向こうから男の声が聞こえる。渚の知り合いか、または恋人か…
「すいません、お待たせしま…」
「あっ…」
慌ててドアを開けた日和は固まる。
ドアを開けると、先程気まずい別れ方をしたバイト先の先輩…もとい元愛犬だった男がいたら、他に一体どんな反応があるだろうか?
「…渚って1人暮らしじゃなかったのか?」
「あの…お姉ちゃんとはどんな関係で…?」
驚き過ぎて冴月の質問に違う質問で返すしか出来ない。
「どうしたの?…って冴月じゃん」
電話が済んだらしく、日和の後ろから渚が覗く。
「お姉ちゃんこの人知って…!?」
「知ってるも何も、お隣さんだし」
「嘘!?」
「アンタバイトのことばっか考えて、あんまり周り見てなかったからね」
「俺も知らなかったんだけど…コイツがいるの」
「知らないオッサンを『昔飼ってた犬だよ』って妹に紹介しろって?」
「じゃあお姉ちゃん、生まれ変わりって話知ってるの!?」
訳が分からない。混乱しもはや右左に向く首ふり人形のように渚と冴月を見るしか出来ない。
「可愛い妹よ、恋人の素性くらい知ってるぞ」
止めと言わんばかりに、渚はニッコリ笑った。
フラッ…
「日和っー!!」
急に来た目眩でふらつき、日和は座り込んでしまった。
「冗談なのに」
「相手と状況見て考えろや阿呆!!」
あらあら…と軽い渚に、日和を心配しながら鬼の如く険しい顔で怒る冴月がツッコミをするという、騒がしい午後8時だった。
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