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翌日、少女は件の男子に謝られた。
下校途中に公園で遊んだ男子は通学路にある少女の家の前を通ると、庭に面する塀から冴月が突然飛び掛からんばかりに吠えてきたと言う。犯人を捕まえるよう訓練された元警察犬がそれ程吠えれば小学生には恐怖でしかない。
「冴月!冴月ー!!」
帰って早々、少女は冴月に抱き付く。
「聞いて!あのね…!」
少女は笑顔で今日の出来事を伝える。それを迷惑そうに、だがどこか楽しそうに聞く冴月。
警察犬を辞めこの家に冴月が来て、泣き虫な少女は笑顔が増えた。
いわゆる無愛想な犬の何が良いのか…年の離れた姉に少女は聞かれたことがある。少女は何と答えたら良いか悩んだが、冴月といることが幸せだとは分かっていた。何より、冴月は少女の傍から離れなかった。少女と遊び、悲しめば慰め、誰よりも少女と一緒にいた。
少女と犬…互いを大切に思う1人と1匹の幸せは続いていた。永遠だと思っていた。
あの春までは…
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