50人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
「日和ちゃ~んんん!!」
猫が勢い良く日和に飛び付く。
「ありがとうありがとうありがとうありがとー!!」
「苦しい…」
「離れろクソ猫!!」
冴月が剥がせば、猫谷は子供のように笑う。
「ありがとう日和ちゃん!俺、この名前大事にするよ!」
「…っ、はい!」
日和と猫谷…もとい星はニコニコ笑う。そして星の鼻チュー。
「~~!!」
「こぉんの、馬鹿猫!!」
ゴンっ!!
「痛いー!」
「はいはい、少し離れなさい。晩ご飯作るの手伝って」
冴月の拳骨を食らった星を引きずり、渚がキッチンに消えた。
「またびっくりした…!」
ふぅ…と息を整える日和の傍で、ブスッとしかめっ面の冴月。
「…犬養…さん?」
「…この前の子猫といい、クソ猫といい…何でお前は最近猫に絡まれるんだよ」
ガリガリ首の傷痕を掻く冴月。
「第一、俺はあのクソ猫気に入らんし。何で日和から名前もらってんだよ?
猫なんか気ままに過ごしてんだ、あんなの飼いたいのかお前?」
「猫を、私が飼いたい?」
「昨日渚がわざわざ言いに来たんだ。子猫見ながら飼いたいって悩んでたって…」
「…ああ!…私、動物好きだから、また飼いたいなって思ってたんです。冴月が死んでから、中々飼う勇気が無くて…」
日和はアハハと苦笑いする。
「俺が死んでから…?」
「全然飼ってないです。でも…犬を見たら、冴月しか考えられないから…飼うなら猫かな…って…」
唖然とする冴月にただ苦笑いの日和。
「でも驚きました。私が名前を付けたとか猫を飼うとか…何だか犬養さん、ヤキモチ焼いてるみたいで……」
「…は?」
「…えっ…?」
「………」
「………」
「………帰る!!」
「えええっ!?」
耳が真っ赤の冴月は慌てて帰ろうと立ち上がり、日和が急いで止める。
「離せこらっ!!」
「えっ、本当にヤキモチ!?」
「何何何!?面白いことしてる!?」
ギャンギャンと言い合う元飼い主と元飼い犬。そこに混ざりたがる元猫…
こうして、バイトの休みは過ぎていった。
そしてこの日から、日和と冴月の日々に、新しい花が加わったのだ。
~花言葉…『出会い』
最初のコメントを投稿しよう!