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「さっ君!」
女性は突然駆け出し、冴月に抱き付いた。
「あ?」
「はぁ!?」
唖然の冴月と星。勿論日和と真希もだ。
「どうしたの…?」
呑気な土田もポカンとしている。
「嘘みたい!本当にさっ君に会えるなんて!」
「まさか…梓か…!?」
戸惑う冴月が問うと、女性は喜びながら力を込める。
「覚えてたのね嬉しい~!!」
「ギブギブギブギブ…!!」
「私の大好きな可愛いさっ君が、こんなダンディーになってるなんて…もう素敵過ぎ~!!」
「誰か助けろ…!!」
半分魂が出たような冴月を更にハグで締める女性。
「…誰…ですか…?」
~~~
「さっ君が恋人なら、未練とかどうでも良いかもねぇ~」
休憩室にて。梓と呼ばれた女性は笑顔で冴月の傍に座る。対し冴月は疲れきった顔。
「冴月ちゃんもそんな顔しないで、説明して。恋人と店でイチャイチャされたら僕も営業妨害って怒るよ」
口をへの字にして言う土田。本人は注意をするが、何故か雰囲気が緩い。
「恋人だってさっ君!」
「年の離れた兄弟だよ」
照れる梓を一刀両断。
「もぅノリ悪い!」
「てめぇのブラコンにはうんざりだ」
まるで子供のように怒る梓。無愛想な冴月と『兄弟』という言葉が似合わない。
「久しぶりの再会を喜んでくれないなんて…さっ君酷いわ…!」
今度はしくしく泣き出す。
「…冴月ちゃん、イチャイチャは駄目だけど、綺麗な妹さんとの再会は喜んでね」
「はぁ!?」
「男は女性の涙に弱いんだ…」
そう言う土田。なんだかんだと冴月が悪いという方向に転がっている。
「店長ー電話でーす」
「行く行くー!…んじゃ妹さんと仲良くね!」
店先に残る真希に呼ばれ、土田はキリッと決め顔(そんなに決まっていない)をして部屋を出た。
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