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店から出てきたのは、眉間に皺を寄せた険しい顔をした高身長の男だった。
「…で、どこだよ今日からのヤツは?」
「もぉ~、地顔が怖いのにそんな顔したら鬼にしか見えないよ~」
「てめぇのせいでこっちは振り回されてんだよ!
俺は副店長でもねぇのに、てめぇが金とか考えず行動するから俺が会計する羽目になってんのに…!今度は相談も報告も無しで勝手に雇って…!!」
険しい地顔を更に険しくさせ、辺りを見渡す50代くらいの男の姿は、花屋の店員というよりヤクザだ。
(やっぱり怖いよ…!絶対私も物投げられるよ…!!)
土田の後ろで震える日和が様子を伺うと、ふと男の動きが止まる。
「どうかした?」
「あっ、いや…少し懐かし匂いがしたんだ…」
「サツキちゃん鼻良いからねぇ。もしかして、新しい子の匂いだったり?」
「…で、そいつどこだよ?」
「サツキちゃんにびっくりしてるよ~」
「…分かったよ、雇ったのはてめぇの勝手な判断で、そいつは関係ねぇからな…」
男は溜め息を付き首に手を当てる。
「…冴月…?」
土田の後ろに隠れていた日和が、ポツリと呟き姿を見せた。
「あ?」
「大丈夫、赤峰さん?」
土田に言われ、日和は我に返る。
「ごごごごごめんなさい!!喧嘩売ってるとか違うんです!!
サツキって女性の名前っぽいし、物投げるし怖いって思ったんですけど、何て言うか、溜め息付いた顔とか名前とか昔の愛犬にそっくりだなぁって思ったら無意識に呼んでて…!!」
慌てて理由を伝える日和。しかし男は唖然としている。
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