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大学近くの喫茶店にて、日和は頭を抱えていた。
「どうしたのよ?すんごい雰囲気暗いけど」
後からやって来た奈々子が大量のレポート資料をテーブルに置き、向かいに座る。
「奈々子…」
「大丈夫?バイトのこと?
まさか、犬養さんにこき使われまくってるとか!?それか猫谷が口説きまくってくるとか!?」
「まさか。犬養さんも星君もむしろ助けてくれるから申し訳ないくらいだよ」
前のめりになり問いただす奈々子を宥める。
(…星君は合ってるかも…)
「最近疲れが取れないだけだよ。
私より奈々子の方が大丈夫?奈々子優秀だから色々頼まれてるんでしょ、そんなときにお茶しようって誘ってごめん」
「良いよそんな。アタシだって日和とお茶する方が楽しいし」
笑顔で話す奈々子。すると彼女の携帯が邪魔するようにバイブを鳴らす。
「げっ…!」
液晶に表示されているのは、奈々子が所属する部活の先輩だ。最近は部活時以外でも奈々子に相談をすることが増えているらしい。
「毎度見る目が色目なんだよなぁ…アタシ彼氏いるって何度も言ってんだけど。
てか日和との時間邪魔するなっての!」
「でも、部活の相談は本当でしょ?相談だけ聞いていつもみたいにかわしたら?」
勿論日和も良い気持ちのものではないが、奈々子の人付き合いを悪くしたくなかった。
「んー…じゃあちょっとごめん!」
少し考えた奈々子は、携帯を持って急いで外に出た。
「……やっぱり、迷惑だよね…」
外に行く奈々子を見送ると、日和はチラリと鞄を見て溜め息を付く。
その中には、ズタズタに切られた真新しいノートが入っていた。
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