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「すいません、今日帰ります」
1つ頭を下げ、真希はさっさと帰り支度を始める。
「えっ、ちょっと!まだ定時じゃないよ真希ちゃん!」
「店長には許可もらってるから大丈夫」
慌てる星を押し退け休憩室から出ようとする。いつもなら土田の差し入れに一番に食い付く真希が、今日は今クチコミ人気のタルトに見向きもしなかった。
「おう。お疲れ」
仕事に関し口煩い冴月さえ、止めるどころかヒラヒラ手を振りタルトを頬張っていた。
「………」
申し訳なさそうに再度頭を下げると、真希はそそくさと出ていった。
「犬養さーん!キャッチボールしましょー!!」
真希と入れ替わりで、場違いなはしゃぎようで昴が2階から降りてきた。
「狛井うるせぇ」
「やっぱ身体動かしてスカッとしましょうよ!
なんならサッカーします!?テニスでもバドミントンでもフリスビーでも何でも良いですよ!!」
「暑苦しい。タルトが不味くなる」
周りをワンワンと騒ぐ昴を余所に、モグモグと最後に残した苺を味わっている冴月。
「いやいや!昴さん、真希ちゃんが帰っちゃったんだよ!
呑気に遊んでる場合じゃないって!冴月さんも!」
星が説明すると、あれだけはしゃいでいた昴がすんと黙った。
「…俺、午後の配達全部行ってきまーす」
「今から!?」
「うん、今から。星っちのも行って来るよ」
そう言い、昴は星が行く予定の配達先の地図を握る。果てには真希の中途半端にしていたプレゼント用の花束のラッピングにかかり始めた。
「休憩はしろ。身体がへばる」
「宮崎の元祖肉巻きおにぎり、食べたくないです?」
「……俺は何も聞いていない」
買収…いや気を効かせた冴月はそっぽを向く。
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