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「ザイードは……」
愛美は小さく問い掛ける。声が聞けたら嬉しい──
そう思いながら愛美は胸を押さえる。
「ザイード様はまだサンドリアージュに居りますが時期に帰ってきますわい…声が聞きたかったですかな……」
愛美は戸惑いながら返事を返した。
「話をさせたいのは山々ですが──…ザイード様には少々、マナミ様断ちをしていて頂きたい」
「あたし断ち?」
「はい、ザイード様には少々、我慢が必要で御座いますから、マナミ様もご協力をお願いしますわい……っ…がはははっ」
「……?…」
何故か明るく笑い飛ばされてしまった──
何か愉快なことでも思い浮かんだのだろうか?
愛美はお願いされたことに返事を返しながら電話を切っていた。
ザイードが我慢を強いられているのなら……
自分も耐えるべきなんだろう──
“時期に参りますからもう少し待っといてくだされ…”
「………」
取りあえずはこの一言が聞けただけでも安心した──
愛美は包帯をほどいた手を見つめ、指輪を眺める。
きれいなスカイブルーの色はあの広大な砂漠の青空そのものだ。
“大事な物だ──…マナミに預けておく…”
「………」
愛美はザイードの言葉を思い出し、ザイードがしたようにその指輪に軽く口付けていた。
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