片隅の日常

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三日目 試練  今日は午前中だけ講義があった。退屈な講義を終えて学外に出ると、昼時という事もあり人影は疎らだ。路地裏にある男のアパートへと歩いていると何かを踏んづけた。 財布が、人気のない道に落ちていた。 思わず周りを確認してしまった。拾うだけならやましいことは何もないにもかかわらず。とりあえずしゃがんで財布を取り上げ、中身を確認すると一万円札が二枚入っていた。保険証など、身分のわかるものは何もない。 男は悩んだ。 一万円もあれば後4日、何の心配もなく過ごせるだろう。いやしかし、これは誰かの物で自分のものではない。そういえば、拾った物の一部は拾った人の物になるのではなかったか・・・。 散々悩んだ末、財布はおまわりさんに預けることにした。後ろ髪をひかれる思いは多少、いやとてもあったが、やはり盗みはだめだ。 四日目 神様は見ている 朝起きて財布を確認する。残高は210円。一瞬昨日の財布が頭をよぎったが、気を取り直してスーパーを目指した。何を買おうか。米はあるからふりかけか。 一袋108円のそれを買いレジを通るとくじ引き券を渡された。何でも地方食材のプレゼントキャンペーンをしているのだそうだ。これはチャンスだろうか! しかし、店員から話を聴くとくじ引き券5枚で一回。100円ごとの買い物で一枚配布されるらしい。荷物台で捨てられたくじ引き券を一枚拾ったが、それでも三枚足りない。はかない夢だった。 失意の中スーパーを出ると、大量の買い物を抱えたおばあさんが歩いていたので、見かねて手を貸した。と言っても傍のタクシー乗り場までだが。 おばあさんは感謝の言葉とともに余ったくじ引き券をくれた。それも3枚。くじ引きの一等賞は蟹1㎏だ。 結果。なんと三等賞。ご当地ラーメン3食入り。一等でなくても大満足である。
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