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優柔不断な君は、家具とか引っ越しとか、大事なものを選ぶときほど土壇場で「ちょっと待った!」ってなるタイプだった。
正直それで困ることも迷惑することもあったけど、本気で嫌になることはなかった。
なにより、土壇場で選択を変えた彼女はそれによって後悔したことは一度もなくて、いつも幸せそうに「やっぱりこっちでよかった」って笑う彼女がかわいくて、大好きだから。
結婚式の会場も、日にちも、ドレスも、散々悩んだね。だけど流石に土壇場で…ってことはなかった。やっぱり二人で一緒に話し合って考えた甲斐があったね。
その証拠にほら、あれだけ悩んだウェディングドレス、すごく似合ってるよ。
靴だってベールだって、まるで君のために作られたようだ。
綺麗だよ。
僕がそう言うと、君はありがとうと笑って、自分の左手首をぎゅっと握りしめた。
「…いいよ」
「え?」
「いつもみたいに、やっぱりこっち!って、言っていいよ」
「えっ…な、なんで」
だって、左手首、握ってたから。その癖、自分では気がついてないんでしょ?
「わかるよ。だって、ずっと見てたんだから、隣で」
だからわかってたよ、本当は。君の笑顔が、時々曇るのを。
どうしようもなく泣きそうな顔をして、何かを僕に言おうとしては飲み込むのを、本当はずっと、気づいてた。
だけど知らんぷりしてた。君を失うのが、嫌だったから。
「ごめん」
「うん」
「ごめんっ」
「うん」
「ごめんなさいっ…ごめん、」
「いいよ」
今までずっと、繋ぎ止めてたのは僕だから。
ここまで付き合わせて、ごめん。
「行って、いいよ」
涙をぼろぼろ溢した君は何かを言おうとして口を何度も開いては閉じたけど、結局何も言わずにただ深く頭を下げた。
顔を上げてからは一度も僕の目を見ることなく、ドレスを持ち上げて走っていった。
ねえ、君を愛していたよ。
いつもギリギリのところで選択を変える君は、後悔することがなかったね。
「やっぱりこっちでよかった」って笑う君の顔が、大好きだったんだ。
今回だけは後悔すればいいと願う僕を、どうか許して。
【 君を幸せにする方法 】
「やっぱりあっちにすればよかった」と泣く君が、どうしても想像できないんだ。
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