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ネオヤマモトヒロシと恵美子の事情
「恵美理、早くご飯食べちゃいなさい。」
恵美子はようやく制服に着替えた恵美理に声をかけると、洗濯機のスイッチを押した。
恵美子は思い切って、子供を買った。
「ヤマモトヒロシ」を買った会社の、「あおい」という子供を買ったのだ。
ハイブリッド人類の「ヤマモトヒロシ」を量産したこの会社は、今日本で飛躍的に成長しつつあった。
日本の人口の実に10パーセントがヤマモトヒロシになりつつあるのだ。
ヤマモトヒロシも改良に改良を重ね、燃費の良さ、耐久性、安全性は年を重ねるごとに、確固たる信頼を得ており、半人間アンドロイドの実にシェア90パーセントを誇っている。
この会社でも人気の平均的日本人顔の子供ハイブリッド人類「あおい」を恵美子は購入した。
ヤマモトヒロシだけでも、寂しくはなかったのだが、この前のリコールで改良された「ヤマモトヒロシ」は、なんとなく冷たく感じて、恵美子は「あおい」の購入を決めたのだ。恵美子はかねてより、自分の子供には、自分の名前を取って、恵美理とつけることを決めていた。
恵美子が死んだ時に、一緒に死んでしまった娘の名前だ。
恵美子は、元の夫のDVから逃れ、娘の恵美理とひっそりと暮していた。
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