18人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、元の夫に住所をかぎつけられてしまい、子供もろとも、滅多刺しにされて殺されてしまったのだ。
恵美子は何とか、親の財力と現代医学の力で、エンバーミングを施して蘇ることができたのだが、娘の恵美理は損傷が激しくて助けることはできなかった。自分だけが助かったことに、一時は親を恨んだが、恵美子も一度は親になった身なので、親の気持ちは痛いほどわかる。もう一度死のうかと思ったが親の気持ちを考えればそれはできなかった。
恵美子の元夫は、今も服役中で無期懲役。死刑制度は、今の日本では廃止になったのだ。
日本中に「ヤマモトヒロシ」が溢れて、最近ではヤマモトヒロシに自分の姓を名乗らせる女性が増えているが、あえて恵美子はそれをしなかった。まだまだ、あいつが生きているのだ。恵美子はあの時の恐怖を忘れることができない。誰にも知れずに、ひっそりと娘と暮していたのに、かぎつけられたのだ。だから、恵美子はあえて「山本恵美子」として生きることにした。
恵美子は、おいしそうに朝ごはんを食べている恵美理見つめていつの間にか、口元がほころんでいた。
その娘に死んでしまった恵美理を重ねていた。
最初のコメントを投稿しよう!