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恵美子は無意識に買い物カゴに、じゃがいもと人参、玉ねぎを入れて会計を済ませるといそいそと自宅へ戻った。
玄関に立つと、顔認証で玄関が開くようになっている。最近の家はこれが標準装備で、恵美子がインターホンの前に立つと恵美子の顔を認識して、ドアの鍵が開いて、ドアノブに手をかけた瞬間、恵美子の背中に固くて冷たいものが押し当てられた。
「よお、恵美子。久しぶりだな。お茶くらい出してくれるんだろ?」
押し当てられた冷たい物が何であるかも一瞬にして理解できた。これで滅多刺しにされたのだ。
そして、忘れもしない、その声はあの男のものだった。恵美子の頭の中に走馬灯のようにあの忌々しい記憶と恐怖が蘇った。
恵美子の顔を認識したドアは、いとも簡単にその男の侵入を許してしまう。
恵美子は口をぱくぱくとさせるばかりで、満足に空気を吸えないほど怯えていた。
「よくも、俺をムショにぶち込んでくれたな。」
男は半笑いで、後ろに後ずさる恵美子を追い詰めて行く。
誰か!助けて!
そう思った瞬間、男が施錠したはずの玄関ドアがガチャリと開く音がしてヤマモトヒロシが帰ってきたのだ。
「助けて!」
恵美子はようやく声に出して叫んだ。
ああ、でもヤマモトヒロシではこいつに勝てないかもしれない。ヤマモトヒロシは量産品。
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