第1章

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 でも、こいつもひょっとしたら化け物に捕まって、実は化け物になっているかもしれない。俺は身構えた。  「大丈夫だ、俺は捕まっていない」  白井は、俺を安心させるためにひと声掛けて、俺の隣まで来た。    白井は俺の隣に来て、「状況はどうなってる?」と俺に訊いてきた。  「俺も逃げるのが精一杯で、今の状況は把握できてない」と俺は正直に伝えた。  白井は「そうか」と言った。そして続けて「ところで相棒はどうした?」と訊いてきた。    白井は、貴広のことを訊いているのだろう。俺と貴広はいつも一緒だったから。きっと俺の隣に貴広がいないことを不思議に思ったのだ。  「捕まってしまったよ」  俺は小さな声で、この一言を言うのがやっとだった。そのあと貴広がどうなったか?を説明することなどできなかった。  そんな俺の気持ちを察して、白井は「そうか」と、ぼそりと言った。そして、「俺達には逃げるしか方法がない」と俺の言い訳を代弁するような一言を、小さな声だったが力強く言った。  それから俺たち二人は、しばらくその場で身を隠していた。  しかし白井が「向こう側の様子が気になる」と言って俺の場所から去って行った。白井は俺から離れる際、「お互いに逃げ切ろうぜ」と声を掛けてくれた。  白井が俺から離れてしばらく経った。ところが白井が「助けてくれ」と言いながら、こっちに向かって走って来た。  白井のヤロー、化け物を引き連れて俺のほうに逃げてきたのだ。そして白井は、俺のほうを指さし「そこに司が隠れている」と、俺の居場所をバラす発言をした。あいつ、自分が助かるために仲間を売りやがった。  俺は草むらに隠れていても無駄だ、と思い、立ち上がった。すると俺のすぐそばに貴広がいた。でも、この貴広は、俺の知っている貴広ではもうない。化け物になってしまった貴広だ。  俺の親友だったとなら、俺を捕まえず白井のほうを追いかけるはず。しかし今の貴広は、白井より近くにいる俺をめがけて襲ってきた。  俺はすぐさま貴広に背を向け逃げようとした。しかし焦っていたせいか、草の上で足を滑らせてしまった。そのため踏ん張りがきかず、うまくダッジュすることができなかった。  それを見逃すことなく、貴広の手が俺の背中に伸びてきた。  もう一巻の終わりだ。  「タッチ。はい、今度は司くんの鬼ね」  貴広は俺の背中に触り、そう言った。  
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