三色菫

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ある晴れた暖かい日。 和大は野路菊堂の扉を開け放つと 「今日もきれいに晴れたなぁ」 と、大きく背伸びをして空を見上げた。 「お兄ちゃん!」 その声に目線を移すと、向こうから美咲親子が小太郎と一緒に歩いてくるのが見えた。 「お!美咲ちゃん!」 「おはようございます」 「おはようございます」 「ワンッ!」 みんな挨拶を交わして笑い合う。 「すっかり元気になったな、小太郎」 和大は小太郎を優しく撫でる。 「そうだ!見てください、これ」 と、美咲がリュックを和大に見せる。 そこにはリボンをちゃんとつけたペンギンがいた。 「あ、つけてあげたんだ?」 「はい、お母さんに教えてもらって」 「そっか、陸くんも喜んでた?」 和大は悪戯っぽく笑う。 「え?・・・・・・うん」 美咲は照れたように俯いてしまった。 「お前、すっかりおじさんになってる」 楽しそうに笑っている和大の後ろから正大が声をかけた。 「え?!・・・・・・いやいや、そうだとしたら正大もだろ?」 野路菊堂は、今日も平和です。
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