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「ばあちゃん」
「颯ちゃん、久しぶりだね。会いたかったよ」
「僕も…でもここは?」
祖母は悲しそうに微笑むだけで何も言わない。
颯汰は周りを見たが何もない空間が広がっていた。
現実とは思えなかった。
「さあ、行こう、颯ちゃん」
「行こうって、どこに?」
「もうね発車時間が迫ってるのよ」
祖母が颯汰の手を握ると祖母の後ろに電車が現れた。
颯汰が乗るはずだった快速急行に似ていた。
「あれは?」
「颯ちゃん、颯ちゃんはね。もうあれに乗らないといけないんだよ」
祖母は颯汰を諭すようにそう言った。
「あれって…」
疑問を投げかけるようにそう言った颯汰もあの電車がどんなところへ行こうとしているのか、何を意味するのか薄々感じていた。
「さあ」
祖母は颯汰の手を引いた。
「嫌だよ。ばあちゃん。僕、まだ行きたくないよ。そりゃあ、おばあちゃんと一緒にいたいけど…」
祖母は颯汰の目をじっと見た。夢の中の祖母の目だった。
「そうなのかい?」
颯汰を見つめていた祖母は目を閉じ、大きく息をついた。
「じゃあ、もう一度だけ考えなさい。でも、あまり時間はないからね」
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