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『篠原朔楽』の名前を聞いたのは、職場の同僚からだ。
なんでも、男を相手に身体を売る男娼が存在するという。
その男、通称“さくらちゃん”は年齢不詳で、噂によると見た目はまだ若いガキなのだが、そのテクニックと性欲は底知れず、冷やかしで呼んだ相手すらも虜にさせるほどで、安易に呼ぶと骨の髄まで喰らい尽くされるらしい。
俺は至って普通の……いわゆるノンケなわけだけど、少し気になる話ではあった。
現在34歳独身で、仕事ばかりしてきた俺は、風俗なんかに行く時間も体力すらもない。
そんなとき、このさくらちゃんの話を聞いたのだ。
この歳になっても、激しく求め合えたなら。
俺はさくらちゃんの情報を聞いて、端から当たってみることにしたのだ。
全て噂に過ぎない電話番号や、メールアドレス、出没地点、住所、色々当たってみたところ、なんと向こうから電話を掛けてきた。
それはもちろん非通知で。
おそらく彼の耳に俺が探していることが届いたのだろう。
こうして、俺とさくらちゃんは奇跡的に出会った。
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