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「ようこそ、妖(あやかし)専門案内所へ。何かお困り?」
そう言われ、客はうつむけていた顔を上げ、聖を見た。
黄金の目。白い髪。頬には鱗のような模様が走っている。
「俺は巳六(みろく)といいます。……この店は、現世に来た妖の困りごとを解決してくれると聞いて……」
「そうよ。迷子から観光案内、その他もろもろ受け付けているわ。ところで、その頬。あなたってこっちでは蛇だったんじゃない?」
巳六は首肯した。
死んだ動物はあの世で妖力を得て、妖となる。その力が強ければ、人の形をとることも、現世にやってくることもできるのだ。この世で言う妖ものとは、そうやって現世に一時的にやってきた彼らが人の目に捉えられたものである。
「して、どのようなことでお困りですか?」
「……帰れなくなったんです」
「迷子? 任せて、すぐに霊道を……」
「いえ、霊道を通れなくなったんです」
「……といいますと?」
巳六は一度ためらった後、はっきりと言った。
「ウツシヨヘグイをしたのです」
聖と四は顔を見合わせた。
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