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「明美さんの紹介の方ですか? 」
駒井靖夫は待ち合わせ場所で、自分が持っていた物より一機種前のスマホをイジっている男に声を掛けた。
「そうだよ。
あんたが売人さん? 」
駒井靖夫は辺りを見回した。
当然誰も居ない場所での待ち合わせだが、安全には安全を喫したい。
「簡単にそういう発言は止めてもらえるかな」
軽い言動を嗜めながら、初見の男を観察する。
「ごめんごめん」
心のこもってない謝罪を笑いながらする男は、身なり風貌からして警察や麻取でないことは確かだった。
「で、いくつ欲しいの? 」
素早く取り引きを終わらせるのがセオリー。
「んー、とりあえずワンパケ」
「じゃあ、五枚ね」
「はいはい」
男はダボダボのズボンのポケットから、裸で十枚ほどの札束を取り出し、慣れた手つきで数えて五枚の一万円札を渡した。
「じゃあ、これね」
握り締めた小さな小袋を隠すように渡して立ち去ろうとすると、
「なぁ、あんたそれで幾ら儲かってるの? 」
男は女を抱くように、駒井靖夫の背から優しく声を掛けてきた。
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