接渉

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「は?なんでお前にそんな事言わなきゃならねぇんだよ」 肩に掛けた手を外した。 「その言い方は儲かってないよね」 冷たくされても笑顔で語りかけてくる。 「儲かってる奴は『いやー、全然』と笑いながら言うか、『まぁね』と自慢顔するかだ。 違う? 」 駒井靖夫は言い返せないでいた。 「一気に儲けてみない? 」 この言葉に、 「どうやって? 」 お金の魅力に理性が負けていく。 「先ずは数を売らなきゃ大金なんて手に入らないよね。 いくつ持ってんの? 」 ポケットの中に手を突っ込んだまま手持ちを確認し、 「保管してあるのと合わせて五十パケかな」 正直な数字を言った。 「ワンパケ五万で五十…… 二百五十万か」 「いや、この仕事半年やってるけど、そんなに一気に売れる事は…… 」 携帯電話に入ってる客数も五十。 一人につきワンパケ用意しているが、一ヶ月掛けても全て売れる事はない。 「キャンペーンをすればいい」 「キャンペーン? なんの? 」 「『日頃ご愛好の方に感謝祭』 とか言って値引き販売するんだよ。 どんな客でも値引きは好きだ。 ワンパケ四万にすれば一気に二百万だ」 「ちょっ、ちょっと待てよ。 二百万だったら上に渡す分にしか……… 」 言っている途中で気付いたが遅かった。 「ははは、て事はあんたの取り分はワンパケ五千円なんだね」 男前は鼻で笑った。
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