廃墟の中の夢

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駒井靖夫は集合場所である町外れの廃墟に着いた。 日が沈んだ後の無機質なコンクリートは、異様さを増してお化けが出てもおかしくない雰囲気だった。 「もう戻ってたのか」 埃が舞う暗い場所は、男前をより一層輝かせている様だった。 「俺は仕事出来る男なんでね。 そっちはどうだった? 」 相変わらずの笑顔。 「四十はハケたけど、残りの十人はやっぱりダメだった」 笑顔の前には、壊れてはいるが平らなテーブルが置かれていた。 「まぁ、それで上等だ」 日光が無くなった暗い廃墟に、携帯電話の光だけが明るく光る。 「さっさと分けちまおうぜ」 二人はセカンドバッグと鞄から、無造作に入れられた様々な札束を取り出しテーブルの上に並べた。 新札や皺々の一万円札から、汚れた千円札や小銭まで混じっていた。 「ここまでして欲しいもんかね」 お金に人生を垣間見ながら、男前が三本の指で器用に数え、駒井靖夫が十万円単位を輪ゴムで括る。 括り終えた札束を、 「先ずはあんたの上に払う分の二百万、そしておれの魔法の粉の分の二十万」 必要経費だけを取り除き、 「残りが百十五万ずつだな」 男前がセカンドバッグと鞄に再び入れていく。 入れ終わったところで、 「誰だ?こんな時に…… 」 駒井靖夫の携帯電話が鳴った。 「残ってた十人の内の誰かがお金用意出来たんじゃない? 」 男前が「電話取れば? 」と促す。 ディスプレイには知らない番号が表示されている。 訝しみながらボタンを押して耳に当て、唯一の光が廃墟の中から消えた。 「……もしもし」 『駒井靖夫さんですね』 聞き覚えのない声が知るはずのない本名を告げ、 「……誰だ? 」 本能が危機を告げていた。
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