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「親父、どうします?
倉持の叔父貴から催促の電話が…… 」
「貸せ! 」
橋口は塩見から携帯電話をもぎ取った。
「えぇ、わかってますよ。
龍鳳会も物入りなんでしょ、わかってますよ!
ですがね、ウチだって黒崎の親父が亡くなったばかりで大変なんですよ! 」
口調は段々荒くなり、
「わかりましたよ!
納めりゃいいんでしょ、納めりゃ!
腰抜かすぐらいの上納金納めてやりますよ! 」
画面を破壊するのではないかというぐらいの勢いで通話終了ボタンを押し、塩見に投げ返した。
「どうします、親父?」
上部組織からの圧力と自分の組の資源を心配する。
「……例のやつ始めるぞ」
橋口はいつもより深い皺を眉間に寄せ、塩見に暗黙の指示を出した。
「で、ですが親父……
あれは龍鳳会では禁じられ…… 」
橋口はソファーから素早く立ち上がり、
「誰に口聞いてんだてめぇーっ! 」
塩見を蹴り飛ばし、
「上からのルールを素直に聞くなら堅気でもやってろ! 」
倒れた上に乗っ掛かって白い襟元を掴み上げ、
「俺たちはヤクザだろ。
黒崎組だろ! 」
二発、三発と拳を振るい、身だしなみを整えてソファーへ戻った。
塩見は腫れ始める顔を押さえる事なく、
「わ、わかりました。
す、すぐに準備します」
ソファーの背に深くお辞儀した。
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