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廃墟を抜けても、この町外れには寂れた隠れ場所が沢山あった。
草に覆い尽くされたボロボロの民家に隠れ潜んだ。
暗い夜道や曇った空を警察の眩しいライトが照らし回っている。
だが、逃げ足の速さと余りにも多過ぎる隠れる場所に、ライト達は諦めながら遠のいて行った。
その場の難を逃れた事に一瞬だけホッとしたが、
「警察に全てバレた……
客の入った携帯も渡しちまった…… 」
閉じこもる様に俯いた。
「混ぜ物した事もバレるだろう……
俺は警察にもヤクザにも追われるのか…… 」
ブツブツブツブツと独り言を繰り返す。
「警察に捕まれば豚箱行き。
売人の刑期って何年だろう…… 」
警察ではなくヤクザに捕まった時の事を考える。
「金さえ渡せば許してくれるかな…… 」
逃げる時に掴んだ鞄を開ける。
「なっ…… 」
中には白い粉が十パケだけ、札束は全く入っていなかった。
「あいつ! 」
怒りを一瞬叫んだが、
「俺があいつを見つけるより先に、俺の方が先にヤクザに見つかっちまうよな」
自分のマヌケさに笑った。
「客名簿を警察に渡しちまった上に、お金も無い……
残ったのは混ぜ物の十パケだけ……
殺されちまうな…… 」
途方に暮れ、腐った天井を眺める。
「いやだ……いやだ……いやだ…… 」
死の恐怖が駒井靖夫を襲う。
「やってやる……やってやる……
やってやる! 」
覚悟を決めた。
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