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改札を抜け階段を降り、二本目の筋を左に曲がる。
さらに数メートル歩いて細い路地を右へ。
突き当たりは用水路の人通りの全くない場所。
「どれどれ、今日の獲物はいかほどか」
ニヤケながら、いつもの場所で調達した物の中身を確認する。
「なっ…… 」
分厚い財布の中には、小さな透明な袋がいくつも入っている。
「これは…… 」
一袋を摘まみ上げる。
「覚醒剤…… 」
ヤバイと思いすぐに袋を財布に戻し、いつものように証拠隠滅で用水路に財布を投げ入れようとした時、
「やってくれたな」
振り上げた右腕を背後から掴まれた。
恐る恐る振り向く。
足元からゆっくりゆっくりと確認する。
エナメルの靴に、先ほど電車の中で見たお洒落なスーツに高級腕時計。
想像していたのと違ったのは、
「どう落とし前つける気だ、あん? 」
誰かに殴られたであろうパンパンに腫れた、堅気者ではないであろういかつい顔だった。
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