満員電車に御用心

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「いや、どう落とし前って言われても…… 」 「答えられないのか? 」 「痛っ! 」 前蹴りが鳩尾に。 「で、出来るだけの事は…… 」 「出来るだけ? 」 足に、腹に、蹴りや拳が降り注ぐ。 「や、止めてください…… なんでも…… どんな事でもしますから」 塩見の動きは止まり、倒れている駒井靖夫の髪の毛を掴み上げて立ち上がらせ、 「いい答えだ」 ニヤリと笑って、髪の毛を掴んでいた右手を離した。 「ぼ、僕は何をすれば…… 」 「そのブツを売り捌け」 塩見の目線は財布にいった。 「いや……でも…… 」 塩見は再び髪の毛を掴み上げる。 「売り上げの一割はお前の取り分だ。 悪くない話だろ? 」 「で、でも覚醒剤なんて…… かっ…… 」 空いていた左手が喉元を締め付ける。 「電車の中でスリを働くよりよっぽど安全な仕事だ」 「かはっ…… はぁ……はぁ…… 」 離れて立ち上がった塩見を見る。 腫れた顔は、この怖いヤクザよりも更に怖い存在がいる事を示していた。 「わ、わかりました。 やりますよ」 「いい返事だ。 ほれ」 塩見は上着の内ポケットから携帯電話を出して、駒井靖夫にポンと投げた。 「これは? 」 「ヤク中一覧が入った電話だ」 笑いながら、受け取った駒井靖夫を立たせ、 「代わりにこいつは預かっとくぜ」 「あっ…… 」 スリよりも素早い動きで、ズボンの後ろポケットから最新機種のスマホを抜き取り、 「逃げようなんて考えたら、こっちの連絡先に登録してあるやつ片っ端から締め上げるからな」 本気のヤクザの顔を見せつけた。
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