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「……今度は何をさせようって言うんだ」
『なぁに、そう身構えるな。ちょっと会って話をしようというだけさ』
「話……だって?」
『左様。デートと解釈してもらっても構わないが?』
「ふざけるな!」
電話越しに神楽は愉快そうに笑う。
『では少し真面目に話すとしよう。電話ではなく、直接会って君に伝えておきたいことがある。戌井千裕の、死の真相についてだ』
「な…………」
驚きが許容量を超えてしまい、言葉が出なくなる。
『君は知りたかったんじゃないのか? なぜ、善良な刑事だった父親が死ななければならなかったのかを』
「ど……どうして」
『なに?』
興奮で震える口を無理やり動かして、言葉を続ける。
「どうしてあんたがそれを知ってるんだ? どうして俺に教える!?」
『どうして私が知っているのか……それは想像に任せるとしよう。どうして君に教えるのか……ふむ、そうだな。私にとって、それが得になるからだ……とでも言っておこうか』
どうやら、まともに答える気はないらしい。
『私はこれでも多忙な身でな。待ち合わせ場所と日時はこちらで指定させてもらう。二度は言わないから、よく聞け。明日の午後三時。夕桜市内にある、聖アルゴ修道院……その礼拝堂にて待つ。わかったな?』
「三時に……聖アルゴ修道院の礼拝堂……」
ベッドのヘッドボードに置いてあったメモ帳に急いで書き込む。
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