7人が本棚に入れています
本棚に追加
「信じた訳じゃないから」
朝食の後片付けをしながら妻の朋美が吐き捨てるように言った。
昨夜からずっと険悪なムードだ。僕はソファーに座って新聞を広げていた。
「そろそろ会社に行く時間だ」
そう言って新聞をたたみ、カバンを持って玄関に向かった。
靴を履きドアを開いて廊下に出た。エレベーターに向かって歩き出すと
”バタン”と大きな音が響いた。勢いよくドアが閉まったのだ。
いままでそんな音は聞いたことがなかった。普段は僕が見えなくなるまで
ドアを開けたまま朋美が見送っていたからだろう。
(そういえば、付き合いだしてから喧嘩らしい喧嘩をしたことってなかったな)
最初のコメントを投稿しよう!