王だった少年の進撃

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世界は悪の手に包まれようとしている。 邪魔する者、不要な存在の生は許さないという最悪の意思が牙を剥く。 ありふれた平和が砕かれた。 だけどただ指をくわえて見ているわけではない。皆が皆、持てる全ての力で立ち向かっていく。自分たちの命を、生活を、世界を守るために。 人類最高の英雄である勇者。そして勇者の元に集った勇者パーティーたちが敵陣へと攻め込んでいくように―――、 「隕石…だよな、あれ。初めて見た」 ―――彼もまた、止めるべく腰を上げていた。 雲のすぐ下。冷たい風に身を打たれる学校の制服の上に黒いマントを背負った黒髪の少年―――真代 扇(ましろおうぎ)と名乗る王の座から引きずり下ろされたただの魔物は、頭上から落ちてくるオレンジ色の光に包まれた何かを見上げていた。 足の下にある島国、日本の惨状については一先ず後回しにした少年は右肩を大きく回して筋肉をほぐした後、腰から捻って大きく振りかぶる。 落下してくる隕石は日本のどこに落ちても多大な被害が出てしまうだろう。熱や落下により叩き出された速度がばらまく風圧は野球ボールほどの大きさでも凄まじいのだ、明らかに人間以上はある物体が落ちれば比較にならない威力になる。 ならば、最も近い位置にいる自分がなんとかする他ない。 「これ以上下に被害は出させねえ―――ッぞ!」
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