ただあるがままの空気を呼吸する

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思っていたのと違う。 何から何まで。 こんなの、知らない。 そんな中で気づいたことがあるとすれば、恋は予測不能だということ。そして、恋をするのは素晴らしいということ。 妄想の世界に浸かっているだけじゃ、書けない物語もあるということ。 「今度、ゆっくり読みたいな。もちろん、宮西さんがよければの話だけどね」 本郷君は可笑しそうに告げると、踵を返して颯爽と姿を消した。 名前。 私の名前。 幻聴ではない。 確かに聞いた。この耳で。 私の名前。 なんで。 高校二年間で何一つ接点がなかった二人。私の一方的な一目惚れ。いつも教室の窓からグラウンドを見ていただけの一方通行な恋路であった。 ふと原稿用紙に目をやると、なるほど、表紙が一番上になっていた。そこにのっているのは表題と私の名前。 いや、本郷君のことだから、全校生徒の名前を覚えていても不思議ではない。彼のことをなにもしらないのに、そんなことを思った。 『私の名前を知って欲しい』 本当に、それだけでいいのか。 願わくは、あなたを呼吸して生きていきたい。 報われずとも、願うことで生きていける気がした。  
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