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* *
「あああああああぁぁぁあぁ!!!」
私はあまりの痛みに絶叫し、飛び起きる。しかし、その痛みは嘘だったかのようにすぐに消えた。
はぁ、はぁ……先ほどの叫びで肺の中の空気をすべて吐き出してしまったようで、胸を抑えながらゆっくりと深呼吸をする。
あれ……私、生きてる?
自分の体を見下ろし、ペタペタと触る。
死ぬどころか骨折すらしていない。ところどころに切り傷があるといった程度だ。
……嫌な夢を見たな。
私は気分を切り替えるため軽く頬をたたき、ベットから這い出ようとする。シーツも服もじわりと濡れていて気持ちが悪い。
「……あれ。ここ、どこ……?」
先ほどまでは夢のことで混乱していて全く気にならなかったが、シーツが真っ白だ。周りをぐるりと見渡してみると、赤、黄色、黒など色とりどりの薔薇の花が入った花瓶だけが特徴の、白を基調とした閑散とした部屋だった。
「……病院?」
一瞬考え込んでから、そう呟いた。
どうして病院にいるんだろうか。特段大きなけがをしているようには見えない、手足も何の問題もなく動く、思考もきちんと働いている……運動神経や思考回路にも問題なさそうだ。ということは事故ではない……よね。しかし、私は昨日まで何の問題もなく高校に通っていたので、病気で入院、なんてこともないはずだ。
一体、何が起こったのだろうか。
「綺愛(あやめ)!」
ガラッ!!
急に聞こえてきた大声に驚いて、体がびくりと跳ねる。
何事かと思い顔をあげると、その人は急にバッと抱き着いてきた。
「綺愛……! よかった、気が付いたみたいで」
その人はベットに座っている私を苦しいほどに強く抱きしめて、肩を震わせている。
……誰?
ちらと横目で顔を覗こうとするが、髪の毛が邪魔で出来ない。顔を見るより遥かに早く抱き着いてきたし。
何とか思い出そうと先ほどの声を頼りに考える。そして一人の人物にたどり着いた。私の恋人である「久坂部 菖(くさかべ しょう)」君だ。少しハスキーで心地よいところが何となく似ている。しかし、彼の声はもう少し高いし、そもそも身長が違う。必死に記憶を探るが他に思い当たる人はいない。
一か八かで、その知り合いの名前を呼ぶこととした。……間違っていたら、寝ぼけていたとでも言えばいいよね。
「菖(しょう)くん……?」
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