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「……つまり、菖君の家に記憶があらかた戻るまで泊まるってこと……だよね?」
「ま、まぁ……そうなるかな」
ですよね! むしろ他に大学通いながら人並みの生活する方法なんてありませんよね!
そんなことしたら菖君にものすごく迷惑がかかるし、恥ずかしすぎる……そして何より、
――――年頃の男女が一つ屋根の部屋とか大問題だよおおお!
一人暮らしということは、おそらくそこまで広くはないだろうし、結婚前、というか婚約前の男女がそんなことをしてよいものだろうか。いや、最近の高校生はませているからそんなかたっ苦しい貞操観念なんて言うものは気にしないかもしれないし、大学生の私からしたらそんなの特段変なことではないのかもしれない。しかし、しかしですよ!
今の私はそういうことへの耐性がない子供なわけで。
でも、想像力だけは人並みに豊かなわけで。
菖君がそんなことをする人ではないと思っていても、頭の中では思春期のちょっといけない妄想が火を噴きつつ炸裂しているわけで。
頬から耳まで今にも湯気が出そうなほど真っ赤になっているのだろう。カァァっと熱を持っていることがわかる。とても恥ずかしい。
ありがたいけれど悩ましいところだ。
妄想と困惑と羞恥心でオーバーヒートしそうだ。
もしかして、ひかれたりしてないよね?
私は、どうすればわからなくなって菖君のほうをちらと見ようとする。少々不安で、恐る恐る視線を動かしてみると―――
「なんか凄い出血してるけど大丈夫!?」
顔と手を真っ赤に染めた菖君がいた。
「へ、平気。ごめん……確かに泊まりにくいよね……あはは……。」
そういって、彼は気恥ずかしそうに笑った。
彼は抑えているほうとは別の手を使ってポケットからティッシュを取り出した。……一体何を想像したらそうなるんだろうか。いや、私も人のこと言えないけどさ。
そう考えていると、ついつい先ほどの妄想がよみがえってきて、何も言えなくなった。
彼はなかなか血が止まらないらしく、四苦八苦している。全く大丈夫そうには見えない。
「菖君、すごい血だけど……。」
「いつものことだから、心配しないで」
「いつも何やってるの!?」
すごくさわやかないい笑顔も血まみれだと台無しだ。
「そんなことより、今日なんだけど……」
この量の出血をそんなことよりって……菖君は意外と丈夫なのかもしれない。
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