家族になろう

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佳音と和寿は、工房への道をただひたすら黙って歩いた。 話したいこと、話すべきことはたくさんあるはずなのに、佳音は何も言葉にならなかった。何から話せばいいのか分からなかった。 和寿も同じように感じているようで、並んで歩きながら時折目が合っても、少し表情を緩ませるだけで、何も話しかけてきてくれることはなかった。 並んで歩く二人の姿は、とても奇異ながらとても美しく、とても目立つようで、すれ違う人々が振り返って見ている。そんな視線を感じながら、二人の足は工房へと無意識に急いだ。 和寿が重いスーツケースを抱え上げてアパートの階段を上がり、佳音が工房の鍵を開け、中へと入ると、二人はひとまずホッと息をついた。 佳音は手にあるドレスを工房の作業台に置き、花束をダイニングのテーブルに置く。 和寿は大きなスーツケースを玄関のわきに置くと、久しぶりに訪れたこの工房の空気と光と、そしてそこに佳音がいることを、深く息を吸って感じ取る。 そして、その息を吐きだすのも待たず、和寿は速足でダイニングへと向かい、花束を眺めていた佳音をいきなり抱きすくめた。 強く強く、言葉にならない想いをすべて込めて、ただ佳音を抱きしめる。佳音が腕の中にいることを確かめるように、和寿は腕に力を込め、頬を佳音の髪に擦り付けて、ひたすら佳音を抱きしめ続けた。
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